母乳の成分と乳児の消化機能

USDA栄養データベースによると、母乳成分のエネルギー比率は、糖分(乳糖)39%、脂肪55%、タンパク質6%と言われています。つまり母乳は脂肪が最も多いのです。

 

また、脂肪の成分は経時的に変化します。

http://www.beanstalksnow.co.jp/labo/survey/02_lipid/01.pdf

 

各グラフの左上にあるのは脂肪酸の種類です。

C10:0 カプリン酸(中鎖脂肪酸)

C12:0 ラウリン酸(長鎖脂肪酸)

C14:0 ミリスチン酸(長鎖脂肪酸)

C16:0 パルミチン酸(長鎖脂肪酸)

C18:0 ステアリン酸(長鎖脂肪酸)

C18:1 オレイン酸(長鎖脂肪酸)

 

このように、母乳には中・長鎖脂肪酸が豊富に含まれていることがわかります。

さらに、出産初期は消化・吸収しやすいC10-C16脂肪酸の濃度が最大になり、その後はエネルギーが持続しやすいC18脂肪酸の濃度が高くなっています。

 

この脂肪酸の組成変化は乳児が大きくなるのに合わせて変化していると考えられます。授乳の間隔が徐々に空いてくるのも脂肪酸組成の変化が影響しているでしょう。

 

 

補乳食の必要性で述べたように、母乳の栄養成分は生後6ヶ月頃より乳児の必要とする量を下回り始めます。

エネルギーは2−3割、タンパク質は約半分、脂質は2割ほど不足します。糖質は母乳で十分であることがわかります。

 

では、乳児の消化機能がタンパク質・脂質を分解しエネルギーとすることができるのはいつ頃なのでしょうか。

 

糖質の消化機能

多糖類(デンプンなど)はアミラーゼという酵素により単糖(ブドウ糖、オリゴ糖)に分解されます。アミラーゼは唾液や膵液に含まれるほか、母乳中にもアミラーゼが関与します。

 

膵液アミラーゼは胎生20週頃には活性が見られ、その後はほとんど上昇しません。新生児の膵液アミラーゼ活性は低く、その後徐々に活性は上昇するものの乳児期の間は十分ではありません。

 

アミラーゼを測定する方法として、血清アミラーゼがあります。これは血液中に含まれるアミラーゼを測定し、唾液6割、膵液4割のアミラーゼ分泌を反映します。新生児期には成人の0.15倍しか血清アミラーゼはなく、その後徐々に増加しますが、成人と同じ量になるのは5−10歳頃です。

 

生後6ヶ月以降も炭水化物は母乳で満たされていること、母乳にアミラーゼが含まれているものの唾液・膵液中のアミラーゼは不十分であることを考えると、お粥による炭水化物の摂取は乳児にとっては負担となるのではないでしょうか。

 

さらに、糖質の代謝には補酵素となるビタミンB1が必要ですが、生後6か月以降ビタミンB1は母乳だけでは不足します。その状況でさらに糖質を摂取すればビタミンB1が欠乏する恐れがあります。

乳児が1日に必要なビタミンB1は0.1mgですが、お粥100gにはビタミンB1は0.03mgしかありません。一方鶏レバーには100gあたり0.38mgのビタミンB1が含まれています。

 

消化に負担のかかるお粥を食べてビタミンB1を消費・欠乏させてしまわないよう、せめて他の食材で補う必要があるでしょう。

タンパク質・脂質の消化

乳児の胃リパーゼ(脂肪分解酵素)は新生児期にすでに成人分泌量と活性を持ちます。

さらに、タンパク質の消化酵素である胃ペプシンは出生時は少ないものの、その後急速に活性化が進み、生後1ヶ月で急激に増加します。

 

母乳中には血清刺激リパーゼと胆汁酸刺激リパーゼがあります。メインは胆汁酸刺激リパーゼで、母乳中と乳児の胃内では不活性状態ですが、小腸に入ると胆汁酸塩と合わさり活性化し、トリアシルグリセロールとグリセロール、脂肪酸に加水分解されます。このタイプのリパーゼは牛乳には含まれません。(化学同人 応用栄養学 第二版)

 

 

以上より、乳児はタンパク質・脂質の消化が早い段階から可能であり、生後6ヶ月頃に補乳食を始めても問題ないと言えます。

 

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