妊娠中の歯周病予防

妊娠中の歯周病は早産・低体重児出産のリスク


 一般に妊娠すると歯周病にかかりやすくなるといわれています。

近年、歯周病による全身への関与が明らかになってきています。これは歯周病による炎症が血流を介して全身に波及するために起こるとされていますが、なかでも妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産のリスクが7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりも はるかに高い数字です。

歯周病がある場合、ない場合とくらべて低体重児出産のリスクは4.03倍とかなりのハイリスクになります。

すでに歯周病になっている方は、妊娠前・妊娠中にきちんと歯周病の治療をしておくことが大切になります。

また、まだ歯周病になっていない方も、妊娠中は歯周病になりやすいのできちんとしたケアが必要になります。



歯周病とは


歯周病は歯肉や歯を支えている骨(歯槽骨)に細菌が入り込み炎症を起こすことで様々な症状を呈します。

初期では歯茎が腫れたり出血し、進行すると歯と歯茎の境目が破壊され歯周ポケットが形成されたり歯槽骨が破壊されます。

歯周病は歯を失う原因となります。

また、歯周病を機に全身へ広がり敗血症や心内膜炎で最悪の場合、命を失うこともあります。


妊婦における歯周病の原因


妊婦における歯周病の原因

  • 免疫力の低下
  • 歯周病を予防する栄養素の不足
  • 女性ホルモンのアンバランス
  • 口内環境の悪化

についてご説明します。

 

 

  • 免疫力の低下

歯周病は「歯周病原細菌」と呼ばれる細菌により発症・進行していきます。

しかし、この細菌は誰の口にも普段から住み着いている「常在菌」でもあります。

この常在菌は普段は悪さをしないのですが、免疫力が低下すると途端に人間に牙を剥きます。

 

健康な人の免疫力であればこの常在菌が口の中にいても歯周病にはならずに済みます。

しかし、様々な理由で免疫力が低下すると、細菌がもつ繁殖力や病原性を抑え込めず炎症が広がり歯周病が進行していきます。

 

免疫力の低い人は、一般に高齢者、免疫不全症候群(HIV)患者、糖尿病患者に多いですが、妊婦もまた免疫力が低くなりやすい傾向にあります。

 

というのも、妊娠中は赤ちゃんを異物として排除しないように免疫力、とくに細胞性免疫と言われる免疫を抑えるシステムがはたらいているからです。


また、妊娠中は血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌量が増えるため、低血糖になりやすく、下がった血糖値を上げようとするホルモン(コルチゾール)が頻繁に分泌されるようになります。

このホルモンは免疫を調整する役割も担っているため、血糖の調整に過度の負担がかかるとこのホルモンを分泌している副腎という臓器が疲労し、免疫力が低下していきます。

 妊婦が疲れやすいのには、この副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)が関与しているとも考えられます。

 

また、副腎疲労を起こすとうつ症状もみられるようになり、マタニティブルーになることがあります。

 

  • 歯周病を予防する栄養素の不足

歯茎や歯を支える骨が弱くなると、歯周病への抵抗性も下がってきてしまいます。

歯や骨の原料となるたんぱく質やカルシウム・マグネシウム、歯茎のコラーゲンの形成に必要なビタミンC・ヘム鉄、歯茎の粘膜を守る亜鉛、ビタミンB群、粘膜のターンオーバーを促すビタミンDなど様々な必須栄養素が必要となります。

 

しかし、妊婦はつわりなどで十分な栄養素を摂ることができない場合が多く、これらの栄養素は不足しがちとなります。

また、つわりが明けたとしても、これらの栄養素を十分に摂取できている妊婦は現代ではほとんどいないでしょう。特にヘム鉄の摂取は胎児の成長のためにも重要ですが、妊娠中に貧血を指摘される妊婦が多いことからも不足が予測されます。

 

 

  • 女性ホルモンのバランスが変わる

エストロゲンという女性ホルモンは、ある種の歯周病原細菌の増殖を促すことがわかっています。

また、歯肉を形成する細胞が エストロゲンの標的となることが知られています。

そのほか、プロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。

 

これらのホルモンは妊娠終期には月経時の 10~30 倍になるといわれており、妊娠中期から後期にかけて歯周病が起こりやすくなります。

 

  • 口内環境の悪化

虫歯・歯周病予防に必要と言われる「プラークコントロール」のプラークとは、細菌が分泌するネバネバした物質によってできています。

このプラークをなるべく除去することで虫歯や歯周病を予防しようと歯科界では言われていますが、細菌は普段から口にいる常在菌であるため、プラークを完全に除去することは不可能です。

 妊娠初期のつわり期間には、歯を磨くことすら気持ち悪いという妊婦さんもいます。そうなると、口腔ケアが疎かになってしまします。もともと歯周病になっている方にとっては口腔ケアでプラークコントロールをすることが大切ですが、つわりによって疎かになってしまうと歯周病が悪化する可能性があります。


また、つわり中は甘い物なら食べたり飲んだりできるという方も少なくなく、口腔内は砂糖が大好きな細菌の温床となります。

 


 

 


 

歯周病の予防


 以上のように、妊娠中はとくに歯周病の発症・進行のリスクが高まることをご理解いただけたかと思います。


歯周病を予防するには、以下の4点に取り組むと良いでしょう。


  • 免疫力を高める
  • 歯周病を予防する栄養素を摂取する
  • ホルモンバランスを安定させる
  • 口内環境を整える


  • 免疫力を高める

免疫力を低下させる大きな要因として、糖質の摂取が関係しています。

つまり免疫力を高めるためには糖質の摂取を減らす必要があります。


糖質は砂糖だけではなく、米やパンなどの炭水化物、根菜類のでんぷん、果物、ジュースにも含まれています。

 炭水化物や根菜類は甘味がそんなにしなくても体内に入ることでブドウ糖に分解されるため、砂糖を摂るのと大差はありません。


以下の写真は食品に含まれる糖質の量を角砂糖で換算した場合の比較です。

意外と炭水化物に含まれる糖質が多いことがお分かりいただけると思います。

毎食の炭水化物におやつの果物、ケーキ、ジュースなどを摂ることで血糖値は頻繁に乱高下します。

糖質を摂り、血糖値が高くなりすぎると血管が傷つけられてしまうため、防御反応として血糖値を下げようとインスリンというホルモンが分泌されます。

すると、インスリンが効きすぎてしまい低血糖になってしまいます。妊婦は特にインスリンの反応が高まっています。低血糖は放っておくと生命に危機を及ぼすため、今度は血糖値を上げようとアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが分泌されます。


上記にもありますように、コルチゾールを分泌する副腎は免疫力を調整する臓器です。

糖質摂取の度にこの副腎が働くと次第に疲れが出て、免疫力を低下させてしまいます。


糖質がないとエネルギー不足になるのではないかと思われるかもしれませんが、その心配はありません。また、赤ちゃんにとっても糖質(ブドウ糖)はほとんど不要と考えられます。詳しくはこちらをご参照ください。


極力糖質の摂取を減らし、免疫力を下げないようにしましょう。



  • 歯周病を予防する栄養素を摂取する

歯周病の予防に必要な栄養素は歯や骨の原料となるたんぱく質やカルシウム・マグネシウム、歯茎のコラーゲンの形成に必要なビタミンC・ヘム鉄、歯茎の粘膜を守る亜鉛、ビタミンB群、粘膜のターンオーバーを促すビタミンDなど様々な必須栄養素です。


妊娠中は必須栄養素の量も増えるため、食品からすべてを摂取するのは大変です。

例えば、たんぱく質を摂ろうとすると卵なら10個以上、肉なら500g以上が毎日必要になります。これだけの量を食べるためには炭水化物を食べている余裕などありません。


肉や卵、チーズにはたんぱく質以外の必須栄養素も豊富に含まれています。ただし、ビタミンCは少ないので、葉物野菜やサプリなどで摂取する必要があるかもしれません。

また、現代の家畜は牧草ではなく穀物中心で育てられているため、含まれる必須栄養素も少ない傾向にあります。放牧、平飼いにこだわったり、足りない栄養素はサプリメントで補うなど賢く摂取したいものです。



  • ホルモンバランスを安定させる

妊娠中の女性ホルモン自体を調整するのは困難ですが、体内のホルモンバランスを安定させることでいくらか女性ホルモンへも良い影響を与えることは可能です。

つまり、糖質の過剰摂取を抑えればホルモンバランスは安定するため、歯周病を予防する助けとなります。



  • 口内環境を整える

すでに歯周病になっている場合、糖質を控え目にすることで免疫力が高まっていれば歯周病が悪化するリスクは低くなりますが、プラークコントロールのための歯磨き、歯間ブラシなどで口腔ケアを行う必要はあります。

また、妊娠中に悪化しないよう日頃からメンテナンスを受けておくことも大切です。


舌磨き専用ブラシなどが売っていますが、舌磨きは舌を傷つけてしまうのでやめましょう。

舌が白くなる(舌苔)原因はカンジダとよばれるカビが繁殖することによって起こります。カンジダは免疫力が低下したときに繁殖します。糖質の過剰摂取をやめると免疫力が高くなるため、舌苔はなくなります。

 

口内を殺菌するという効果をうたう歯磨き粉や洗口液の使用はやめましょう。

口腔内は本来、常在菌がバランスを保って棲んでいることで粘膜を守ったり、食物の分解を手伝ったりと様々な良い働きをしているのです。

殺菌してしまうとこのバランスが崩れ、口内環境が悪化しやすくなります。歯磨き粉は使わないか、殺菌作用のないものを使いましょう。


歯磨き、うがいには「重曹」がおすすめです。重曹は口腔内をアルカリ性にしてくれるので、重曹水でうがいすると食後に酸性に傾くことで溶け出るカルシウムを抑え、再石灰化を促します。再石灰化すると虫歯になりにくくなります。

また、重曹を少量歯ブラシにつけて磨くとホワイトニング効果が得られます。研磨作用が強いので3日に1回程度にしましょう。


終わりに


歯の健康は妊娠中だけでなく一生を通して大切です。自分だけでなく子どもの歯の健康もこれからは考えなくてはなりません。そのためにはまず、正しい知識を得る必要があります。

 

今回の内容は長尾周格先生の「歯医者が虫歯を作ってる」を参考にさせていただきました。これまでの歯科の常識の間違いをあらゆる視点で解説しており、非常に良い一冊となっていますので、ご興味のある方は読んでみてください。

 

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